この記事で分かること
- 災害時にモバイルWiFiは役に立つのか?
- 災害が発生した際に通信はどのようになるのか?
- 通信事業者・災害時対応の一例
- 今できる通信環境の準備 など
災害時にはモバイルWi-Fiも使えなくなる可能性がある
まず結論ですが、災害時にはモバイルWi-Fiも使用できなくなる可能性があります。
なぜ利用できなくなるのか、その理由などについて詳しく解説します。
要点
- モバイルWi-Fiの通信ルートは基本的にスマホと同じである
- 停電の場合、基地局備え付けの蓄電池で数時間は利用可能な場合有り
- ネットワーク設備が損傷を受けた場合、復旧までにそれなりの時間が掛かる
モバイルWi-Fiの通信ルートは基本的にスマホと同じ
モバイルWi-Fiはスマホ・携帯電話と同じように、最寄り通信基地局の電波を使用してデータの送受信をしています。
そのため、停電や設備故障などで、基地局やネットワークセンターにトラブルが起きると正常な通信ができなくなります。
一部例外はありますが、原則として契約した通信会社の回線、もしくは契約した通信会社が提携している会社の回線を使用する事になります。
基地局の場所や、使える周波数なども各通信会社によって様々です。
停電の場合、基地局備え付けの蓄電池で数時間は利用可能な場合有り
通信基地局を動かすために電力が必要ですが、停電が発生した場合、数時間〜最大24時間程度は非常用電源で凌げる場合もあります。
ただし、蓄電池や自家発電機能を備え付けている基地局はそこまで多くなく、停電対策されているエリアは限られています。
また、街の電柱などに取り付けてある小型基地局に蓄電池は搭載されていませんので、停電の際には通信ができなくなります。
停電対策が強化されている地域は、通信会社のホームページで公開されています。
ネットワーク設備が損傷を受けた場合、復旧までにそれなりの時間が掛かる
前述の通り、通信基地局〜ネットワークセンターの間には様々な通信機器があります。
電源が供給され、全ての機器が正常な状態でないと通信はできません。
通信事業者ではネットワークの保守担当が、24時間365日体制で設備に異常がないかを監視しています。
システムで異常を検知するとアラームが発報され、ネットワークの保守担当は原因の特定を開始します。
基地局側でアンテナや無線機、伝送装置が故障してしまった場合には現地に出向き交換したり、基地局とネットワークセンターを結ぶ光ファイバーが切断されてしまった場合には、切れてしまった箇所を融着や引き直しをしたりして復旧させます。
この対応箇所が多ければ、その分復旧までに時間がかかります。
通信事業者各社は災害を想定した復旧・BCPプランを持っている
BCPとは、Business Continuity Planning(事業継続計画)の略で、企業などが災害発時に事業を継続して行えるように、予め用意しておく計画のことです。
大手通信事業者では災害時に、通常の基地局エリアよりも広いエリアで使えるネットワーク(大ゾーンエリア)を使用できるようにする等準備がされています。
大手通信事業者・災害復旧プランの一例
各通信事業者の災害対策への取り組みのページでは、災害発生時にどのように通信を復旧させるのか具体的なプランが発表されています。
ドコモの災害時に運用する大ゾーン基地局は、各都道府県に概ね2箇所、全国に100箇所以上存在します。
移動車載基地局や、可搬型基地局の配備数を公開している事業者もあるので、各キャリアの対策状況を比較してみるのも良いかもしれません。
大切なのは複数の通信手段(ネットワーク)を用意しておく事
安価な維持費で準備できる回線もありますので、ぜひ参考にしてみてください。
最近地震が増えてきていますが、災害時には複数キャリアの回線持ってると良いですね。
auはダメでもソフバン使えたり、その逆も普通にあります。
地震だけでなく台風でバックホール断とか普通にあります。
筆者のSNS投稿より引用
WiMAXはauとUQ2つのネットワークが利用可能
WiMAXはauのネットワークと、UQ(WiMAX)のネットワーク、2種類が標準利用できます。
特に、KDDIは2021年にアメリカのスターリンク社と業務提携し、2022年からauの一部ネットワーク向けに活用を開始しています。
スターリンクは、PayPalやテスラの創業者としても知られるイーロン・マスク氏の会社で、衛星を利用したブロードバンド通信を提供する会社です。
これまでに地球の軌道上に2,000機以上の通信衛星を打ち上げていて、最終的に1万2000機以上の通信衛星で、球上全体への通信サービスを提供できるようにする計画です。
Broad WiMAXは、モバイルWi-Fiの中でも高速通信で利用者の多いWiMAXのMVNO(仮想移動体通信事業者)です。
WiMAXは全社的に同じネットワークを使用するため、どのプロバイダーで契約しても使用できる通信エリアは同じです。
Broad WiMAXなら、他社から乗り換えの場合、40,000円まで違約金を肩代わりしてくれるサービス有り。
月額料金(税込) | 4,708円(税込) 初月無料 |
利用ネットワーク | au・UQ |
最大通信速度 | 下り最大:4.2Gbps 上り最大:286Mbps (端末により異なる) |
通信制限 | 一定期間内に大量のデータ通信をすると、ネットワーク混雑時間帯に速度制限がかかる場合有り |
同時最大接続数 | 16台(端末により異なる) |
楽天モバイルは、もしもの時のサブ回線として優秀
楽天モバイルは、毎月利用したデータ量分だけ課金される仕組みの料金プランです。
毎月3GBまでは1,078円、最大3,278円(税込)が上限でデータ量無制限で利用できます。
安価な維持費で、もしもの際に備える事ができます。
また、070から始まる電話番号も一つもらえるので、モバイルWi-Fiとしての利用だけではなく、SIMカードをスマホに差し替えれば電話番号での音声通話もできます。
楽天モバイルは、5Gのエリア構築に力を入れている通信キャリアですが、現在、楽天で販売中のモバイルWiFiは、本体が5G通信に対応していないので、4Gでの通信になります。
同梱されてくるSIMカードをスマホに挿して利用する事もできますので、スマホが5G通信に対応した端末であれば楽天の5G回線を利用する事ができます。
月額料金(税込) | 3GBまで:1,078円 20GBまで:2,178円 20GB〜上限なし:3,278円 |
利用ネットワーク | 楽天・一部au |
最大通信速度 | 下り最大:150Mbps 上り最大:50Mbps (端末により異なる) |
通信制限 | 無制限 ※公平なサービスのため、速度制限の場合あり |
同時最大接続数 | 16台(端末により異なる) |
Wi-Fiスポットを把握しておくと万一の際に役に立つ
モバイル環境が繋がらなくなった場合、固定回線経路なら利用可能というケースもあります。
各キャリアが店舗などで提供しているWi-Fiスポットは、元々はモバイルネットワークへのトラフィック負荷を軽減させるために構築されている意味合いもあります(Wi-Fiデータオフロードと言います)
そのため、モバイルネットワークとは別のWi-Fi専用通信経路になっている事が多いです。
事前に頭の中に入れておくと万一の際に役に立つかもしれません。
また、お近くのフリーWi-Fiスポットを現在地から把握できるアプリなどを使用して、フリーWi-Fi提供場所を把握しておくのも良いでしょう。
タウンWiFiアプリ by GMOはダウンロードも利用も無料です。
セキュリティリスクに関して十分ご留意頂き、重要な情報の通信は行わないようにしましょう。
クラウドSIM型のモバイルWi-Fiは役に立つ?
クラウドSIM型のモバイルWi-Fiは、一本の契約でドコモやソフトバンク、auなど複数キャリアの電波を自動選択して通信する仕組みです。
一見、災害時に強い印象を受けますが、SIMサーバーと呼ばれる特殊な装置が中央集権的な役割を担っているため、このSIMサーバーがダウンすると、どのネットワークにも繋がらなくなります。
複数キャリアが使用できるという大きなメリットもあり、一概に何が良くて何が悪いとは言えませんが、このようなリスクがある事を頭に入れておく必要があります。
また、SIMサーバー運営事業者に対しては、ドコモやソフトバンクなどのMNO事業者と比べて、まだ厳格な運用ルールや規制もないため、復旧プランやBCP体制についも現時点では不透明な懸念があります。
参考クラウドSIMの仕組みをプロが徹底解説!メリット・デメリットは?
災害時に無料開放される00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)
00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)は、大規模災害時に無料で解放されるWi-FiのSSIDで、大手通信事業者やメーカー、地方自治体が共同で提供しているサービスです。
00000JAPANの無料解放エリアに入ると、スマホ側でSSIDが現れるようになり、契約している通信会社に依存せずに使用できます。
なお、緊急時の利便性を優先させているため、00000JAPANの通信は暗号化されていません。
個人情報や重要な情報の送受信はしないようにしましょう。
まとめ
後回しにせず、ぜひ今できる防災や通信環境の備えについて考えてみてください。
まとめ
- 災害時にはモバイルWi-Fiも使えなくなる可能性がある
- 停電の場合は基地局備え付けの蓄電池で数時間は利用可能な場合有り
- ネットワーク設備が損傷を受けた場合、復旧までにそれなりの時間を要する
- 通信事業者各社は災害を想定した復旧・BCPプランを持っている
- 複数の通信手段を用意しておくと不通に対するリスクが軽減