クラウドSIMとは、ユーザー側の端末で物理的なSIMカードを使用しない、ソフトウェアSIMのことを言います。
本来は端末に搭載された契約情報や、識別情報などのデータを保有したSIMカードを使って通信をしますが、クラウドSIMを使った通信ではSIMサーバー上にあるSIMカードを使用します。
SIMサーバーでは各地域での通信に必要なSIMカードを保有しています。
ユーザー側の端末にはシードSIMというソフトウェアが組み込まれていて、ここにサーバー上のSIMカードのプロファイル情報を、都度割り当てることにより通信します。
これにより、使う国や地域に応じてユーザー側で端末にSIMカードを差し替えることなく、現地のSIM情報をダウンロードし通信する仕組みです。
クラウドSIMの仕組みを分かりやすく解説
クラウドSIMの通信フロー
- 端末はローミングネットワーク経由で、位置情報をSIMサーバーに通知します
- SIMサーバーは端末の位置情報を受信し、保有されているSIMカードの中から使用するキャリアを選択します
- 使用するSIMカードのプロファイル情報を端末に送ります
- 端末は選択されたSIMカードのキャリアの電波を使用し、通話やインターネットを利用します
上記写真は、クラウドSIM型モバイルWi-Fiの端末内部です。
この状態で使用します。
中国のuCloudlink社がプラットフォームを開発
uCloudlinkは2011年に発足され、クラウドSIMを中心に世界各国で特許を獲得し事業を世界展開しています。
同社は中国が本社で、GlocalMeというブランドで端末販売と、Roamingmanというレンタル向けサービスのブランドを運営しています。
GlocalMeの端末はAmazonなどでも購入する事ができます。
Amazonで購入した場合は、140カ国で使用できる1.1Gの容量付きで、容量の追加購入は専用のサイトにアクセスして購入します。
クラウドWi-Fiとは、クラウドSIMを使ったモバイルWi-Fi
冒頭でも少し触れましたが、クラウドWi-Fiとは、クラウドSIMを使用したWi-Fi端末またはWi-Fi接続サービスのことを言います。
日本ではY!mobileが自社のポケットWi-Fiサービスで、いち早くuCloudlink社の端末(701UC)を導入し話題になりました。
この他にも、どんなときもWiFiや、めっちゃWiFiなど多くの事業者がuCloudlink社の端末(U2・U2s・D1)を使用しています。
また、日本のMAYA SYSTEMがuCloudlinkのOEM製品としてjetfonというブランド展開をしており、限界突破WiFiが端末に採用しています。
U3
U2・U2s(D1)
G4
P3(jetfon P6)
画像出典:Amazon、Glocalme公式サイト
端末モデル名 | 採用している事業者 |
U3 | Mugen WiFi AiR-WiFi どこよりもWiFi など |
U2・U2s(D1) | どんなときもWiFi めっちゃWiFi hi-ho GoGo Wi-Fi など |
P3(jetfon P6) | 限界突破WiFi MAYA SYSTEM など |
G4 | Mugen WiFi hy-fi など |
G3(701UC) | Y!mobile |
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クラウドSIMのメリットは?
クラウドSIMのメリット
- 1本の契約で複数キャリアの回線を使用できる
- 世界中で利用可能
- SIMカードの差し替えをしなくて良い
1本の契約で複数キャリアの回線を使用できる
従来の通信は1契約で1キャリアの回線しか使用できない1対1のものでしたが、クラウドSIMでは、1本の契約で数キャリアの通信ができる事が特徴です。
SIMサーバーにSIMカードを保有できる限り、通信できるキャリアは無限に広がります。
世界中で利用可能
その国のSIMカードがSIMサーバーに保有されていれば、どこの国でも利用する事が可能です。
海外で使用する場合も、渡航先の国で使用できる使用SIMカードの購入や手続きをしたりする必要はなく、そのまま渡航先で使用できます。
さらにプリペイド式のSIMカードは基本的には割高な傾向がありますが、現地とほぼ同等の通信費で利用する事ができます。
端末にSIMカードの差し替えをしなくて良い
SIMカードは全てSIMサーバー上に保有されているので、ユーザー側で端末にSIMカードをわざわざ差し替えたりする必要がありません。
クラウドSIMのリスクとデメリットは?
クラウドSIMのデメリット
- 接続する回線はユーザー側で選べない
- 端末のスペックがボトルネックになる事がある
- SIMサーバーを運用する事業者の管理能力が問われる
使用する回線はユーザー側で選べない
クラウドSIMは複数キャリアの回線を使用する事ができますが、使用する回線はSIMサーバーの運用事業者のコントロール配下にあるため、ユーザー側で選択する事ができません。
もしユーザー側で使用する回線(SIM)を選択したい場合には、eSIMという2つの通信プランを同時に利用できる技術があります。
iPhoneではデュアルSIMと言われていますが、通常使う回線契約とは別に追加で契約をし、ユーザー側で切り替えながら使用する事ができます。
例えば、MNOの回線+格安SIM(MVNO回線)の2キャリアを切り替えながら使うという方法も取れます。(利用するには端末のSIMロックが解除されている必要があります)
端末のスペックがボトルネックになる事がある
端末は全世界共通の端末を使用するため、利用する国で提供しているバンド(周波数)に端末が対応していないと電波を掴めないため、通信ができない、電波が弱いという事態になる可能性があります。
また、利用する国の回線事業社側で素晴らしいパフォーマンスの回線速度を提供していたとしても、通信速度は端末側の最大通信速度に依存します。
これはクラウドSIMに限った話ではないですが、スペックの低い端末を使用している場合には、思うような通信ができないことがあります。
スペックに注意が必要
- 利用可能バンド(周波数)
- 最大通信速度
SIMサーバーを運用する事業者の管理能力が問われる
au・docomo・SoftBankなどの回線事業者(MNO)は回線のトラフィックを厳しく監視していて、日々回線がパンクしないように保守・管理しています。
具体的には、データの通信経路をVLAN(バーチャル・ラン)というIDで管理していますが、コア設備の処理能力を超えないように、しきい値を設けています。
しきい値を越えそうになった場合には、基地局固有のVLAN IDを変更し通信経路を変更することなどにより収容されるコア設備の負荷分散をかけています。
この他にも設備の冗長構成を取ったり、回線を絶対に停止させないように、あらゆる手段で備えています。
ここが重要
- 設備の保守メンテナンス
- トラフィックの分散
SIMサーバーは、通信を司る一番大切な中枢(人間の体で言えば脳)の役割をしているので、この部分がパンクしていたり、何かトラブルがあると通信ができない状態になります。
つまり、SIMサーバーを運用する事業者の管理能力がとてもに重要なります。
個人的にはSIMサーバーを管理する事業者もMNOと同等の保守管理体制が必要になると考えています。
ちなみに、日本の電気通信事業法では、3万人以上に2時間以上の影響を与える通信障害を発生させた通信事業者は、総務省へ重大事故として30日以内に報告が必要になります。
クラウドSIMの仕組みと特徴まとめ
クラウドSIMは、SIMサーバー上にあるSIMカードを使用し、ユーザー側の端末にSIMカードを差し替えることなく、現地のSIM情報をダウンロードし通信する仕組みです。
クラウドSIMのメリット
- 1本の契約で複数キャリアの回線を使用できる
- 世界中で利用可能
- 端末にSIMカードの差し替えをしなくて良い
クラウドSIMのデメリット
- 接続する回線はユーザー側で選べない
- 端末のスペックがボトルネックになる事がある
- SIMサーバーを運用する事業者の管理能力が問われる
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